未完の人生 栗本薫 | ようこそ もぐ庵へ 

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座右の銘は『いいかげんは良い加減』
人生をなめている訳ではないけれど。

5月26日、栗本薫さんが亡くなった。


卒論をもとに書かれたという『文学の輪郭』という文学評論を読み、彼女の才能に感嘆した遠い日が思い出される。

向田邦子、如月小春、杉浦日向子、ナンシー関・・・才多き女性は生き急ぐのかとも思う。


驚く程、多作の人だった。
その分、彼女の嗜好に走り過ぎた作品が多くなっていたようにも思う。
いわゆる、『同人誌』的なものである。

栗本薫と中島梓のラインも、いつの間にか曖昧になっていたような気がする。
中島梓(栗本薫)は、『文学の輪郭』を文庫化するにあたり書いたあとがきに、
「文学」は理念というものの存在することの不可能な、多様性の時代に入ったと予言し、
自らもその多様性の中に身を投じたのである。


彼女は、私が敬愛する向田邦子と腕相撲をし、吉田秋生に小説の挿絵を描いてもらい、
木原敏江とシルクロードを旅している。
バンドで歌を歌い、長唄・小唄・清元の名取であり、津軽三味線もこなす。
そして筋金入りの着物好き。

羨ましい人生にみえた。

しかし、稀に見る彼女は濃い化粧で、共感を得にくい言動が多くなっているように思えた。


漫画家木原敏江との共著『シルクロードのシ』で
通訳の中国人に
「わびしい」と「さびしい」の違いを問われ、
さりげなく、
「フクダさんは独身です フクダさんは奥さんいなくてわびしい 
  張さんは 奥さんに会えなくてさびしい。」
    と答えた、その才気が惜しまれてならない。


ご冥福を祈ります。